【官公庁・管理者向け】ダム堆砂調査の効率化とBIM/CIM対応|マルチビーム測量のメリットと最新実績


公開日: 2025年1月15日
読了時間: 約20分
カテゴリ: 技術解説
タグ: ダム調査、BIM/CIM、マルチビーム測量

ダムの長寿命化と治水・利水機能の維持において、堆砂状況の正確な把握は避けて通れない課題です。しかし、従来のシングルビーム測量では「データの密度」や「解析の精度」に限界があり、維持管理計画の策定に苦慮されている担当者様も多いのではないでしょうか。

本記事では、現在のダム管理において主流となりつつある「マルチビーム深浅測量」を用いた堆砂調査について解説します。BIM/CIMへの対応やNETIS登録技術の活用メリットなど、官公庁の皆様が事業を推進する上で不可欠なポイントをまとめました。


第1章:ダム堆砂調査を取り巻く現状と課題

1-1. 気候変動に伴う堆砂急増のリスク

近年は線状降水帯や台風の長寿命化など、極端降雨の発生頻度と規模が増えています。降雨が集中的になると、上流の崩壊・洗掘が増え、ダム湖へ流入する土砂・礫・流木の量も一気に跳ね上がります。結果として、

  • 洪水調節容量の目減り: 洪水時に一時的に水を貯め込む”空き”が小さくなり、治水運用の自由度が低下。
  • 利水容量の圧迫: 取水に使える”有効貯水容量”が減少し、渇水時のリスクが上昇。
  • 水質・設備への影響: 濁度の長期化、取水スクリーンの目詰まり、放流設備付近での地形変化など、運転維持の負担が増加。

ポイント: 堆砂は”体積の総量”だけでなく、”どこにどんな形で”載っているかが運用影響を左右します。

よくある運用課題(例)

  • 「等深線が古く、最新の堆砂形状がわからない」
  • 「しゅんせつ量の見積りが過小/過大になり、予算や効果説明で苦戦」
  • 「濁水長期化の要因箇所が特定できず、対策優先度が付けにくい」

用語ミニ解説

  • 線状降水帯: 発達した雨雲が帯状に連なる現象。狭い範囲に大雨が長く続き、土砂災害や洪水の原因となる。
  • 堆砂: 上流から流入した土砂が貯水池内に堆積すること。時間とともに容量を埋めていく。

1-2. ダム長寿命化計画とアセットマネジメント

ダムの長寿命化は、「現状把握 → 診断 → 対策立案 → 施工・運用 → 事後評価」というアセットマネジメント(AM)のPDCAで進みます。この最初の”現状把握”で得られる地形・容量データの質が、その後のすべての判断の天井を決めます。

なぜ”堆砂の3次元把握”が効くのか

  • 計画の確度: 堆砂の”高さ・広がり・勾配”を三次元で押さえると、死水容量と有効容量の境界が明瞭になり、しゅんせつ量の算定誤差が縮小。
  • 優先度設定: 取水口前・洪水吐周辺・狭隘部のクリティカル箇所を特定し、限られた予算を”効く場所”へ集中。
  • 事後評価: しゅんせつや排砂の効果を時系列差分で定量化。次回計画へのフィードバックが容易。

最低限そろえたい”基盤データ”セット

項目内容
3D点群XYZ/LAS・LAZ+メッシュ(TIN/グリッド)
図面・派生成果等深線図・縦横断図(標高基準・計測条件のメタデータ付)
容量データ容量カーブ/容量表(版管理と算出条件のトレーサビリティ)
品質記録校正結果、検証測線、推定不確かさ、欠測範囲

第2章:従来手法 vs 最新マルチビーム測量|精度の差が予算に響く

2-1. 「点」の測量から「面」の測量へ

取得原理の違い

3D

マルチビーム vs シングルビーム 3Dシミュレーション

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株式会社アーク・ジオ・サポート — ソナー技術可視化


シングルビーム(SBES)

  • 船の真下”1本のビーム”で点を取得
  • 測線(ライン)に沿って縦一列の深度列が得られ、測線間は補間が前提

マルチビーム(MBES)

  • 扇状に多数のビームを同時送受信し、走航1回で帯(スワス)=面をフルカバレッジ取得
  • 測線間の”空白”をほぼ無くせます

何が嬉しいか

  • 補間に頼らず実測で面を埋めるため、小地形(リップル・起伏)や堆砂フロントのエッジが消えにくい。
  • 取水口前の溝状地形や、法面の崩落舌など、運用影響の大きい微地形を捕捉しやすい。

2-2. 堆砂容量算出の正確性が向上する理由

“点群→面→体積”の一貫処理

  1. 3D点群(xyz) を高密度で取得
  2. TIN(不等間隔三角網)やグリッドに変換
  3. 基準面(設計面・前回成果)との差分体積を演算

基準面が”面”として高忠実であるほど、容量算出の系統誤差が減ります。SBESのように測線間を補間で”埋める”比率が高い場合、堆砂の偏在(山・谷)を平均化してしまうため、死水容量や有効容量の推定がブレやすくなります。

クリティカル箇所の精密評価

  • 取水口・放流設備の前面や急峻法面の立体形状を忠実に再現でき、局所的な堆積丘や浸食溝を識別。
  • 死水容量境界面(最低水位面など)との立体交差部を精査でき、”効く”しゅんせつ量を設計しやすくなります。

2-3. 調査期間の短縮と安全性の確保

工期短縮のメカニズム

項目SBESMBES
湖幅1,000m区間の走航本数約40本(測線間隔25m)約10〜12本(スワス幅100m)

旋回・発着・機器校正の付帯時間まで含めると、総作業時間が大幅短縮します。また、欠測や取りこぼしが少なく、追加出動のリスクを低減できます。

安全性の向上(人が危険域に入らない)

  • 無人ボート(USV/ASV): 急流・強風・満水期・狭隘部でも、オペレータは岸や母船から遠隔操船。
  • ROV: 取水口直下・ゲート周辺・狭い立坑など、ダイバーでは危険/困難な領域をリモートで確認・追計測。
  • 音響カメラ: 濁水で視界ゼロでも、構造物周りの状況を動画的に可視化して安全確認と状況判断を支援。

第3章:官公庁案件で必須となる「BIM/CIM」への対応

3-1. 3次元点群データによる見える化のメリット

合意形成と説明責任を強化

  • 直感的な可視化: 湖底地形を点群やメッシュで表示し、堆砂の位置・厚み・勾配を一目で共有。
  • 関係者間の共通理解: 発注者・管理者・設計・施工・住民説明まで、同じ3Dビューを基に会話でき、用語や尺度の齟齬を低減。
  • 資料作成が早い: 等深線図、縦横断、断面比較、体積表などを同一モデルから自動生成でき、版管理も容易。

見える化で”伝わる”工夫

  • 色分布(ヒートマップ): 標高・水深・堆砂厚を連続色で表現 → 優先対策箇所が一目瞭然。
  • 基準面との差分: 前回成果/設計標高との差を±で着色し、増減の量と位置を同時提示。
  • 断面スライサー: 取水口前や水路軸上で任意断面を即時生成 → 設備影響を線で説明。
  • アニメーション: 前後年次を時系列で切替、しゅんせつ効果を”動画的”に示す。

3-2. 維持管理フェーズにおけるデータの利活用

“一度きり”で終わらせない時系列運用

  • 定期観測の差分解析: 年度・出水後・しゅんせつ後に同一仕様で再観測し、堆砂量の増減・移動方向を定量化。
  • KPI設計: 年平均堆砂率、取水口前の堆積厚、最小水深の維持率など、運用に直結する指標を設定。
  • 更新頻度の最適化: 堆積の空間偏在と季節性を踏まえ、重点区間の年次/半期観測などへ配分。

データ運用フロー(例)

計測(MBES/USV/ROV)

  └→ 3D点群生成(校正・品質管理)

    └→ メッシュ/TIN化・差分体積算定

      └→ BIM/CIM連携(設計・GIS・ビューア)

        └→ 合意形成・入札・実施

          └→ 事後評価(再観測)→ 次計画へ


第4章:総合評価落札方式で有利に働く「NETIS登録技術」の活用

4-1. NETIS登録技術の選定による加点ポイント

メモ: NETIS加点は”新技術を使うこと”ではなく、”効果を説明できること”に付与されます。数値と再現手順をセットで。

技術提案で”点が伸びる”書き方のコツ

  1. 活用目的を1文で明確化
  • 例:「取水口前の堆積丘の正確な体積把握と、しゅんせつ量の過不足防止を目的に、NETIS登録のマルチビーム技術を活用する。」
  1. 効果の”数値”を置く
  • 品質:SBES比で面カバレッジ100%、点密度×○倍、容量算定の不確かさ△%低減
  • 工程:湖面カバレッジを○日→○日に短縮
  • 安全:USV/ROV投入により要員の水上作業ゼロ化
  • コスト:やり直し削減による出動回数低減
  1. 適用範囲・制約も併記
  1. 品質確保フローを”見える化”
  1. BIM/CIMとの連携を明記

4-2. アーク・ジオ・サポートが提供する高度な水中探査技術

機材・システム構成(代表例)

  • 最新鋭マルチビーム測深機(MBES): 広開口角・高ビーム数、浅水〜中深域に対応
  • 高精度IMU+RTK GNSS: ロール/ピッチ/ヒーブ/ヨー補正とcm級測位
  • 無人ボート(USV/ASV): 狭隘部・強風域・出水期でも遠隔自律走航
  • ROV(有線水中ロボット): 人が入れない領域を追計測
  • 音響カメラ(イメージングソナー): 濁水下でも可視化し、構造物周辺の安全確認とディテール把握

よくあるご要望への対応

  • 「取水口周辺だけ高密度で」 → 局所に多ビーム高頻度+ROV近接スキャン
  • 「BIM/CIMにすぐ載せたい」 → 成果を指定座標・ファイル仕様で即時納品、ビューア同梱
  • 「入札での加点根拠が欲しい」 → 比較事例・感度分析図・QC記録を技術提案用に整備

第5章:【事例紹介】国内ダムにおける堆砂調査の実績

※実務上の機密保持に配慮し、以下は実案件の数値レンジ・運用手順を基にした匿名化・代表事例です。

5-1. 大規模ダムにおける広域測量の成功事例

プロジェクト概要

  • 対象: 多目的ダム(貯水池面積 約2.0〜2.5 km²、最深部60m級)
  • 目的: 最新の堆砂容量と等深線のアップデート、しゅんせつ計画の見直し
  • 計測体制: MBES+IMU+RTK GNSS、母船+USV併用

成果と効果

項目指標/値備考
計測面積2.2 km²葦帯・浅瀬除く
計測日数4日(SBES想定9日→▲5日短縮)
平均点密度約200点/m²解析用に間引き前
再測率0%欠測・要再出動なし

5-2. 難所・狭隘部における水中ロボット(ROV)の活用例

背景

  • 対象: 取水口前の進入水路(幅6–8m、局所水深12–18m)
  • 課題: 濁度高・流木漂着で可視カメラ不可、船舶接近が困難
  • 目的: 取水スクリーン前の堆積厚と障害物の把握、局所しゅんせつ設計

成果・判断

  • 堆積丘の同定: スクリーン前15m区間で最大+1.1mの土砂堆積
  • 障害物: 基礎保護ブロック上に流木塊(長尺2–3m級)を検出
  • 安全性: ダイバー不要、水上立入0人日でリスク大幅低減

5-3. 再現性と適用条件の整理(横断的まとめ)

  • 適用水深: 概ね2–80m(極浅ではUSV+高周波、深所では開口角制御)
  • 環境条件: 濁度・気泡・風浪に応じ音速・姿勢・ゲインをチューニング
  • 品質確保: 毎日冒頭のパッチテスト、日中のSVP再取得、交差検証で不確かさ報告
  • CIM活用: 点群→TIN→差分→等深線→容量表を同一座標・同一水位で版管理

第6章:まとめ—次世代のダム維持管理に向けて

本稿の要点(エグゼクティブサマリー)

  • 高密度×フルカバレッジのマルチビーム(MBES)は、補間依存を下げて容量算定の不確かさを縮小。
  • BIM/CIM連携で点群→メッシュ→断面→容量表までを一貫管理し、合意形成・説明責任を強化。
  • USV/ROV・音響カメラの併用により、短工期・高安全で狭隘部や濁水条件にも対応。
  • NETIS登録技術の計画的活用は、総合評価落札方式での加点と、施工・維持の品質向上に直結。
  • 時系列比較により、しゅんせつ効果や堆砂動態を定量化し、ライフサイクルコスト(LCC)最適化に寄与。

導入ステップ(推奨フロー)

  1. 現状診断: 既存図・容量表・過去観測をレビュー、重点区間・必要精度を設定
  2. 計画立案: 測位・姿勢・音速・カバレッジ条件、USV/ROVの適用範囲を定義
  3. 計測実施: MBES+IMU+RTK、SVP取得、パッチテスト→本観測→検証測線
  4. 解析・可視化: 点群正規化→TIN/グリッド→差分体積→等深線・断面・容量表
  5. BIM/CIM連携: LAS/LAZ、OBJ/FBX、SHP/DXF、容量表XLSX+Webビューで納品
  6. 合意形成・入札: NETIS活用計画・効果の数値根拠を添えて説明
  7. 事後評価: しゅんせつ/出水後の再観測でKPIを検証→次計画へ

付録A:用語解説(ダム堆砂調査・BIM/CIM・NETIS)

現場でそのまま使えるよう、ひと言定義+実務ポイントで整理しました。

A-1. 測量・機器系

マルチビーム測深機(MBES:Multibeam Echosounder)

  • 扇状に多数の音波を同時送受信し、帯状(スワス)=面で水底を計測する装置。

シングルビーム測深機(SBES)

  • 船底直下の1本の音波で点的に深度を取得。測線間は補間が前提。

USV/ASV(無人ボート)

  • 岸や母船から遠隔操船/自律走航する小型船。危険水域・狭隘部の計測に有効。

ROV(有線水中ロボット)

  • 有線で遠隔操作する潜水機。取水口・ゲート直下などダイバーが困難な領域を近接観測。

A-2. データ・解析系

点群(Point Cloud)

  • xyz座標の集合。メッシュ化や等深線生成、体積算定の出発点。

TIN(不等間隔三角網)/ グリッド

  • 点群から作る面モデル。TINは地形の変化を表現しやすい。

容量曲線・容量表

  • 水位と貯水容量の関係。運用・計画の基礎資料。

A-3. BIM/CIM・入札関連

BIM/CIM

  • 3Dモデルに属性を与え、計画〜維持管理まで一貫運用する仕組み。

NETIS(新技術情報提供システム)

  • 新技術の活用効果を示し、総合評価で加点を狙うための仕組み。活用目的・定量効果・再現手順をワンセットで記述。

ご相談窓口のご案内

アーク・ジオ・サポートでは、予備診断(無償ヒアリング)→計画案→概算→実施まで一貫してご支援可能です。まずは以下の情報をお知らせください。最適な測量仕様と工程、BIM/CIM・NETIS対応をセットでご提案します。

準備いただきたい情報

  • 対象ダム情報:名称・所在地・座標系、最新の水位運用条件、作業可能期間
  • 既存資料:等深線図・容量表・前回観測データ、図面(取水・放流設備)
  • 希望成果:必要精度・優先範囲、BIM/CIMでの利用有無・形式
  • 制約条件:立入制限、環境条件(濁度・風浪)、安全要件

お問い合わせ方法:

  • メール:お問い合わせフォーム
  • 電話:03-5304-7899

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