マルチビームソナーシステム iWBMSe

高解像度ナローマルチビームソナー NORBIT社製 iWBMSe|プレビュー

岸壁・護岸の水中部を、潜水調査に頼りきらずに面的に把握する

港湾施設の維持管理では、岸壁法線の出入り、根固め工の沈下・散乱、エプロン前面の洗掘といった「水中で進行している変状」を、限られた工期と船舶手配のなかで確認する必要があります。NORBIT社製 iWBMSe は、送受波器・動揺センサー・水中音速度計を一体化した高解像度ナローマルチビームソナーで、水中部の形状を面的な点群として取得するための機材です。

潜水調査だけでは範囲を押さえきれない

潜水士による目視・触診は局所の詳細確認に強い一方、岸壁延長の全体にわたって変状の分布を同じ密度で押さえるには、時間と費用がかかります。先に面的な測深で変状の位置と規模を絞り込めば、潜水調査を必要な箇所に集中させることができます。

洗掘・堆積の進行を数量で示せない

「洗掘が進んでいるようだ」という定性的な報告では、対策工の必要性や優先順位を説明する根拠になりません。取得した点群から設計面・基準面・前回計測との差分を取れば、洗掘深や堆積厚、土量として数量化できます。

出来形管理で求められる形式に合わない

浚渫や根固めブロック据付などの出来形管理では、要領に沿った測深密度と提出データ形式が求められます。iWBMSe は i-Construction 対応を明示した機材で、面的な測深成果をそのまま出来形の根拠として扱う前提で運用できます。
【要確認:A-GSとして提出実績のある出来形帳票・データ形式】

NORBIT社製 iWBMSe(高解像度ナローマルチビームソナー)

iWBMS シリーズは、ソナー部(送受波器)と動揺センサー(IMU)、表層水中音速度計(SV)が一体となった高解像度ナローマルチビーム音響測深機です。測深・動揺・音速の各データは一本のケーブル内に集約され、水中部から船上局に送られます。港湾・泊地・航路といった浅海域で、構造物と海底地形を同時に扱う調査を主な用途としています。

01

一体構造とカーブドアレーによる広角計測

ソナー受信部(RX)にカーブドアレー(Curved Array)を採用することで210度の広範囲を計測でき、200kHz〜700kHzの広い周波数範囲で均一な受信ビーム幅を得られます。これによりスワス幅を7°〜210°の間で自由に選べます。岸壁法線や護岸法面のように鉛直に近い面を、水面付近まで一度の航走で拾える点が、港湾構造物の調査で効いてきます。

  • 岸壁法線・護岸法面など鉛直に近い面を、広スワスで水面付近まで計測
  • 航路・泊地・前面海域の面的な水深測量
  • 同一測線の反復計測による洗掘・堆積の経時比較
  • Side Scan/Back Scatter/Snippets による底質・散乱物の判読補助
  • Roll Stabilisation・Beam Steering により、動揺下でも測線に沿った測深密度を確保
【画像指示:iWBMSe 本体(送受波器+IMU+SVの一体構造)の外観写真。ブラケット付きで、スケールが分かる角度】
02

船上ユニット SIU-I-NAV と可搬性

船上ユニット NORBIT SIU-I-NAV は 200mm×161mm×83mm、2.5kg と小型で、AC100〜240V または 10〜28VDC で駆動します。ソナー、IMU、SV、ソナーケーブル、GPSアンテナ2個、GPSアンテナケーブル、船上ユニットが1つのケースにまとめられており、ペリカンケース梱包時で19kg未満。ソナー部はブラケット込みで空中6.5kg/水中2.4kgのため、金具への取り付けと船舶への艤装が容易です。取付金具は使用する船舶に合わせて設計します。

  • 小型船・作業船への舷側艤装が前提の機動的な調査
  • 機材一式が1ケースにまとまるため、遠隔地・離島への搬入がしやすい
  • 動揺センサー(IMU)は内蔵の SurfMaster
  • インターフェースは Ethernet、消費電力60W(最大75W)
【画像指示:船上ユニットSIU-I-NAVと、ケースに機材一式が収まった状態の写真(可搬性が伝わるもの)】

NORBIT iWBMSe の仕様

項目仕様
スワス幅(一度に計測できる帯状の範囲)7〜210°(浅海 IHO Special Order 該当範囲は 155°超)
探知可能水深0.2〜275m(標準的には160m)
周波数400kHz/帯域幅80kHz(周波数アジリティ 200〜700kHz。低周波モードおよび高周波・超高分解能モード)
ビーム数256〜512(EA:等角度/ED:等距離)
ビーム幅(標準)400kHz:0.9°×1.9°/700kHz:0.5°×1.9°
ビーム幅(オプション)400kHz:0.9°×0.9°/700kHz:0.5°×0.9°
レンジ分解能10mm未満(音響)
ピングレート最大50Hz(アダプティブ)
測位精度水平:±(8mm+1ppm×RTK基準局からの距離)/垂直:±(15mm+1ppm×RTK基準局からの距離) ※GNSSアンテナ間隔1mを想定
方位精度0.08°(RTK、アンテナ間隔2m時)
ピッチ/ロール精度0.03°(アンテナ間隔に依存しない)
ヒーブ精度5cm または 5%(RTK時 2cm)
重量6.5kg(空中)/2.4kg(水中)※ブラケット込み。ペリカンケース梱包時19kg未満
インターフェースEthernet
ケーブル長標準8m(オプション:25m、ピッグテール、最大50mまでのカスタム)
消費電力60W(最大75W)/10〜28VDC、110〜240VAC
動作温度−4℃〜+40℃(船上ユニット:−20℃〜+55℃)
保管温度−20℃〜+60℃
防塵・防水船上ユニット:IP67(防塵、1mまでの浸水に対する保護)/水中部:100m
対応機能Roll Stabilisation、Beam Steering、Side Scan、Water Column、Back Scatter、Snippets
船上ユニットNORBIT SIU-I-NAV(200mm×161mm×83mm、2.5kg)
動揺センサー(IMU)Applanix社製 POS MV™、OceanMaster、WaveMasterII、SurfMaster、OEMバージョンから選択
準拠基準IHO Special Order、CHS Exclusive Order、USACE New Work を上回る性能(Exceeds)/i-Construction対応
型番Part #12006
仕様に関するご注意:本表はNORBIT社カタログの技術仕様(TECHNICAL SPECIFICATION)からの転記です。ビーム幅について、カタログの特長欄には「0.9°×0.9°」、技術仕様欄には「標準:400kHz 0.9°×1.9°/オプション:400kHz 0.9°×0.9°」と記載があり、構成によって異なります。【要確認:A-GS保有機のビーム幅構成(標準/オプションのどちら)】 また、水中部の防水定格は100mである一方、探知可能水深は0.2〜275mと記載されています。実際に適用できる水深は、送受波器の設置深度と海象・底質条件に依存します。【要確認:測深精度の社内実測値・検定成績】

調査の進め方

1
事前協議

対象施設と調査目的(点検/出来形/洗掘確認/設計用測量)、求められる精度と準拠要領、提出データ形式、工期を確認します。既往の水深図・竣工図があると測線計画の精度が上がります。

2
現地確認・船舶選定

岸壁形状、係留船舶の稼働状況、水深、流況、作業可能時間帯を確認し、艤装可能な船舶を選定します。取付金具は使用する船舶に合わせて設計します。港湾管理者・利用者との調整もこの段階で進めます。

3
艤装・較正(キャリブレーション)

ソナーを舷側等に取り付け、GNSSアンテナを設置します。電源投入後、ソナーに組み込まれたIMUの較正(キャリブレーション)(GAMS)をNORBITコントロールソフトウェアの手順に従って実施し、オフセットを入力します。

4
計測

計画測線に沿って航走し、測深・動揺・音速データを収録します。分解能を優先するか計測範囲を優先するかに応じて、周波数とスワス幅・スワス方向を設定します。現地でデータ品質を確認し、欠測があれば測線を追加します。

5
解析・点群化

音速補正・潮位補正を行い、ノイズ除去・フィルタ処理を経て点群およびグリッドデータを作成します。必要に応じて設計面や前回成果との差分を計算します。【要確認:使用する解析ソフトウェア】

6
成果品作成・報告

水深図、縦横断図、3D点群、差分図などを作成し、計測諸元・補正内容とあわせて報告書にとりまとめます。追加調査や対策工の検討が必要な箇所は、根拠となるデータとともに示します。

調査可能な条件・制約

適する対象・目的

  • 岸壁・護岸・防波堤の水中部の形状把握(法線の出入り、法面の崩れ、根固めブロックの散乱・沈下)
  • 航路・泊地の水深測量、浚渫の出来形・出来高管理
  • 構造物基部・エプロン前面の洗掘、堆積の面的な把握と経時比較
  • 濁水中・夜間の計測(音響方式のため光学的な視程に依存しない)
  • 水面付近まで含めて計測したい場合(スワス幅を最大210°まで広げられる)
  • 小型船で機動的に実施したい調査(機材一式が1ケース、ソナー部6.5kg)
  • 陸上部と連続した点群が必要な場合(iLiDARオプション併用時)

適用しにくい条件

  • ひび割れ幅、鉄筋露出、表面劣化といった材料そのものの判定。形状は取得できても、劣化の程度は音響測深では判断できません
  • 岸壁直下、オーバーハング部、桟橋上部工の裏側など、音波が届かない死角
  • ケーソン目地の内部、裏込め材の空洞など、構造物内部・地中の状態
  • 船舶が進入できない狭隘部・極浅部。探知可能水深の下限は0.2mですが、実際には喫水と航行安全の制約を受けます
  • スクリュー航跡・湧昇・曝気などで気泡が多い水域。欠測とノイズが増えます
  • 密度成層が強く水中音速の変化が大きい水域。音速補正の精度が成果に直結します
  • 高い岸壁の際、上屋や橋梁の下など、RTK-GNSSの受信環境が悪い場所では測位精度が低下します
面的な形状把握はマルチビームソナーが得意とする一方、変状の「見え方」の確認や材料劣化の判定には別の手法が適します。iWBMSe による測深で変状の位置と規模を絞り込んだうえで、水中音響カメラ(ARIS)やROV、潜水士による目視調査を必要な範囲に限定して組み合わせる進め方が、費用と情報量のバランスを取りやすい方法です。【要確認:ARIS・ROVとの併用実績】

成果品

  • 水深図(等深線図・カラー段彩図)
  • 縦断図・横断図(任意測線での断面切り出し)
  • 3D点群データ(水中部の形状を保持したデータ)
  • 差分図(設計面・基準面・前回計測との比較による洗掘深、堆積厚、土量)
  • Side Scan/Back Scatter画像(底質・散乱物の判読補助)
  • 計測諸元・補正内容・使用機材を記載した調査報告書
  • i-Construction 対応の出来形管理データ
    【要確認:対応する具体的なデータ形式(LandXML、CSV、点群LAS等)および座標系・基準面】
  • 【要確認:標準の納品形式・納品媒体・納期】
【画像指示:岸壁前面を計測した3D点群のスクリーンショット。洗掘部が色分けで判別でき、カラーバーとスケールが入っているもの】

データ品質と現場安全の考え方

計測品質の担保

送受波器とIMUが一体のパッチフリー構造のため、取付角オフセットを現地で較正するパッチテストが不要で、艤装ごとの較正誤差が入り込みにくい構成です。方位精度0.08°、ピッチ/ロール精度0.03°、レンジ分解能10mm未満という仕様のもとで計測し、収録データは現地で品質を確認します。

音速・潮位の管理

表層水中音速度計を一体で搭載しているほか、必要に応じて音速度プロファイルを取得し、水柱の音速変化を補正します。潮位補正は、対象水域の潮位観測記録に基づいて行います。【要確認:使用する潮位観測所、基準面(DL/TP等)の運用ルール】

潜水調査との使い分け

本調査は船上からの音響計測のみで完結し、潜水作業を伴いません。潜水士の作業時間管理や減圧計画を必要とする調査に比べ、悪条件下での人的リスクを抑えられます。一方で、部材表面の詳細確認が必要な箇所については、潜水調査や水中カメラによる補完を計画に織り込みます。

作業安全と中止基準

岸壁周辺は係留船舶・作業船が輻輳するため、港湾管理者および施設利用者と作業時間帯・航行ルートを事前に調整します。気象・海象の悪化時は計測を中止します。【要確認:波高・風速に関する社内の作業中止基準】

実績・ケーススタディ

本機材を用いた具体的な調査事例は、公開可否の確認を含めて整理中です。掲載にあたっては、以下の項目を揃えて記載します。

対象施設・水域 【要確認】
調査の課題・目的 【要確認】
実施手法・機材構成 【要確認】
現場条件(水深・流況・濁度・作業制約) 【要確認】
計測範囲・工程 【要確認】
成果品と、そこから得られた判断 【要確認】

【要確認:iWBMSe を使用した実施案件の有無、発注者名・施設名の公開可否、掲載可能な図面・点群画像】

よくあるご質問

Q潜水調査の代わりになりますか。

目的によります。岸壁法線の出入りや洗掘・堆積といった「形状の変化」を面的に押さえる用途では、潜水調査より短時間で広い範囲を数量化できます。一方、ひび割れ幅の計測や部材表面の劣化判定は音響測深では判断できないため、潜水調査や水中カメラによる確認が必要です。実務では、測深で変状箇所を絞り込み、潜水調査を必要な範囲に限定する組み合わせが有効です。

Qどのくらいの水深まで測れますか。

カタログ上の探知可能水深は0.2〜275m(標準的には160m)です。実際に取得できる範囲は、送受波器の設置深度、底質、濁度、気泡の有無といった現場条件に左右されます。港湾・泊地の一般的な水深帯であれば、水深による制約は小さいと考えられます。

Q濁っていても計測できますか。

音波を使うため、光学カメラでは視程が確保できない濁水中や夜間でも測深は可能です。ただし、スクリュー航跡や曝気などで気泡の混入が多い水域、密度成層により音速変化が大きい水域では、欠測や精度低下が生じることがあります。

Q小型の船でも使えますか。

ソナー部はブラケット込みで空中6.5kg、船上ユニットは2.5kgと小型で、機材一式が1つのケースにまとまります。舷側艤装が可能な作業船であれば対応できる想定です。取付金具は使用する船舶に合わせて設計します。【要確認:対応可能な船舶の最小規模、A-GS手配可能な船舶の有無】

Q出来形管理に使えますか。

iWBMSe は i-Construction 対応を明示した機材で、カタログ上は IHO Special Order、CHS Exclusive Order、USACE New Work を上回る性能とされています。実際に出来形管理へ適用できるかは、発注機関の要領が求める測深密度・精度・提出形式によって決まりますので、事前に要領をご共有ください。【要確認:対応可能な出来形管理要領および提出データ形式】

Q陸上部も一緒に測れますか。

オプションのレーザースキャナ NORBIT-iLiDAR を追加すると、陸上・水面上のレーザー計測データと水中の測深データを統合できます。エプロンや上部工と水中部を連続した点群として扱えるため、岸壁全体の形状把握に有効です。【要確認:A-GSにおける iLiDAR の対応可否】

Q費用と工期はどのように決まりますか。

主に、計測範囲(延長・面積)、必要な測深密度、船舶の手配条件、現地までの移動、港湾管理者との調整に要する日数、解析と成果品の内容によって決まります。同じ範囲でも、概況把握を目的とした計測と、設計に用いる高密度計測とでは所要日数が変わります。まずは対象と目的をお知らせいただければ、条件を整理したうえで概算をご提示します。【要確認:標準的な1日あたり計測延長・面積、費用レンジ】

ご相談時に、分かる範囲でお知らせください

対象施設と所在地(港湾名・岸壁名)
調査目的(点検/出来形/洗掘確認/設計用測量)
計測範囲(岸壁延長・面積・水深帯)
求められる精度・測深密度、準拠する要領・基準
提出データ形式・座標系・基準面
船舶の手配区分(発注者手配/A-GS手配)
現地の制約(係留船舶の稼働、作業可能時間帯、航行・立入規制)
既往資料の有無(竣工図、前回測深成果、潮位記録)
希望工期・報告期限
潜水調査・水中カメラ等の併用希望の有無

すべてが揃っていなくても構いません。対象施設と目的だけでも、適用可否と概略の進め方をご回答できます。

岸壁・航路の水中部を、どこまで測れるかご相談ください

対象施設と調査目的をお知らせいただければ、iWBMSe による計測が適するか、潜水調査や水中カメラとの併用が必要かを含めて、調査計画の考え方をご提案します。仕様書の作成支援や積算のご相談にも対応します。